まず、実簡約リー群の無限次元ユニタリ表現の幾何学的不変量のひとつである随伴多様体ならびにそれに重複度の情報を付加した精密化である随伴サイクルをreductive dual pair対応と関連づけて研究した。以前の研究では対の一方がコンパクトであるdual pairの対応に現れたユニタリ最高ウエイト表現を取り扱ったが、今回、西山享(京大)およびC.B.Zhu(シンガポール国立大)との共同研究では、コンパクト性や最高ウエイト性の仮定を外した設定に踏み込んで無限次元ユニタリ表現の不変量とある種の領域上の定積分との関係を考察し、正則離散系列からのテータ対応で得られる表現の族に対して、随伴多様体(ベキ零軌道の閉包になる)の記述や重複度(次数)の定積分表示とその定積分の計算などを行なった。 非可換調和振動子とは、調和振動子をWeyl量子化の手続きで多成分化したものであり、微分作用素の非可換性と行列の非可換性が微妙に絡み合ったモデルである。この研究では階数が2の場合に、表現論的なアプローチによって、非可換調和振動子のスペクトル問題が、複素領域のHeunの微分方程式の大域解の存在問題と等価であることを発見した。 半単純対称空間上の不変固有超関数の隠れた対称性の発見が接空間の無限小レベルで生ずる(これは代表者の昔の研究)だけでなく、対称空間の大域的レベルでも生ずることを示した。また、藤井道彦(京大)との共同研究では、錐多様体上のラプラス作用素の3次元ベクトル値の微分方程式がスカラー値の超幾何微分方程式に分解できることを示し、その分解を具体的に与えた。
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