研究課題/領域番号 |
15340011
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
横山 和弘 九州大学, 大学院・数理研究院, 教授 (30333454)
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研究分担者 |
野呂 正行 神戸大学, 理学部, 教授 (50332755)
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キーワード | 多項式イデアル / 準素分解 / 根底計算 / Groebner basis / パラメトリックシステム / VOA / 代数曲線 / 正標数 |
研究概要 |
計算機の進歩により、計算するという観点から現代数学、特に代数学、を見ることが意味を持ちつつあります。この計算を通じて、現代暗号に代表されるように、代数学が直接的に工学などの実学に応用されることも可能になっています。本研究では、『現在の計算機の能力で、どこまで代数における数学的な操作が計算可能か』を代数構造の分解に焦点を当てて検証し、実現した計算法を『数学研究支援として役立てる』ことを試みました。本年は、(1)可換代数における分解法と(2)非可換代数や代数曲線研究での計算機支援を取り扱いました。 (1)では、(a)計算可能な体(環)上の多項式イデアルの根基計算法と(準)素分解法として、正標数(有限体を係数体)の場合に、完全な分解を与える最も効率的な手法を考案し、研究分担者と共同で計算機実装と実験によりその有効性を検証しました。高速な計算は、標数0の場合の計算に対して、射影により係数体を有限体に落とすことで、そのmodular imageが計算できることとなり、数学研究支援としても有効に使われています。(b)さらに、指数や係数にパラメータを含む場合のイデアル構造の安定性に関して、問題の定式化を試み、最も基礎と思われる0次元の場合にいくつかの基本結果(周期性等)を得るなど、研究が進行しています。(c)暗号等の工学応用で重要視されている、整数の素因数分解や素数生成(証明)に関して、最新の手法の計算機実装を進めています。次年度からは、これらを基盤により計算量に優れ、効率の良い方式の導出へと向かう予定です。 (2)では、Monster群と関わりのあ、lattice VOAの既約表現の完全分類に関して、singular vectorを計算機により導出し、さらにZu代数の構造を可換代数の剰余類環計算により決定しました。検討すべきlattice VOAはまだ残っており、さらなる計算機による研究支援を継続しています。また、代数曲線における未解決問題(Abhyankar)に対して、藤本助教授(福岡教育大)らと共同で計算機により反例を構成しました。そこでは、問題を多項式イデアルが自明になるかどうかに置き換え、Groebner基底計算(根基計算)によって最終的な結果を得ました。さらに、付随する事項として、代数計算の普及を目指し、Groebner基底の啓蒙書を研究分担者と共著で出版したことを付け加えておきます。
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