研究概要 |
本研究課題の目標は2つの目的からなる.第1目的:『現在の計算機の能力で,どこまで代数における操作が計算可能か』を代数構造の分解に焦点を当てて検証する.記号・代数計算を用いて,基本的数学的操作である『分解』の実現を行う.第2目的:実現した計算法を『数学研究支援』として役立てる.研究者の能力を補佐することで,『未解決問題への実験的アプローチ』を実行し、計算機による予測,計算結果による証明を与える.さらに計算能力を拡大することにより,工学への応用を与え,その有効性を確かめる.そこで,いくつかのテーマを選択し,アルゴリズムの開発と数式処理システム上での実装を行い,成果を得ることができた.「現在の計算機での到達点を推し測ること」では,高度な計算を実現できる可能性を見出すことができた.各テーマに関して具体的な成果の概略を述べる. 1.可換代数:有限体上の多項式イデアルの素分解に対し,効率的なアルゴリズムとその実装を得,効率的な実現ができた.パラメータを指数部に持つ多項式で生成されるイデアルの構造の安定性について,グレブナー基底の形による構造の安定性を定義し,その安定性の判定計算法を基本的な場合に対して与えた.限定子除去を行うCAD法の効率化として数値・数式融合計算法を提案した. 2.対称性を持つ可換代数:多項式の分解体の計算にガロア群計算を利用する効率的方法を得,計算量的にも効率的な手法であることを確認した. 3.非可換代数:ある種の格子から作られるVOAの既約加群の分類の計算機支援による証明を与えた. 4.数学研究および工学研究支援:代数曲線のある種の予想を計算機により証明した.制御理論では,多項式の実数部が正となる根の総和に対してグレブナー基底を導入することで,総和に対する設計条件から制御パラメータの値を求めることを可能にした.その他,いくつかの応用研究を行なった.
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