研究課題/領域番号 |
15340032
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
数学一般(含確率論・統計数学)
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
樋口 保成 神戸大学, 理学部, 教授 (60112075)
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研究分担者 |
福山 克司 神戸大学, 理学部, 教授 (60218956)
足立 匡義 神戸大学, 理学部, 助教授 (30281158)
渡辺 清 神戸大学, 理学部, 助教授 (60091245)
吉田 伸生 京都大学, 大学院理学研究科, 助教授 (40240303)
村井 浄信 岡山大学, 大学院社会文化科学研究科, 助手 (00294447)
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研究期間 (年度) |
2003 – 2006
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キーワード | 中心極限定理 / 相境界 / 条件つき極限定理 / Widom-Rowlinsonモデル / パーコレーション / シルピンスキーカーペット格子 / 鋭い相転移 |
研究概要 |
本研究は相転移の数理モデルの多くに現れる相境界の挙動、特に揺らぎについての確率論的な理解をできるだけ抽象的な形で得ることを主目標として行なって来た。その中でも相境界の揺らぎについて、中心極限定理、条件つき極限定理としての揺らぎについての理解を得る事を目標に掲げて来ていたが、この問題については研究の初期段階で得られた2次元Widom-Rowlinsonモデルの相分離線の条件つき極限定理として、境界相がブラウン迎動を使った簡単な確率微分方程式の解として得られるガウス型確率過程を得る事を示すに終った。目標としてはかなり一般のクラスのモデルを含む一般論として同種の極限定理を示す事を目指していたが、一方で自由エネルギーの解析性を示す段階でパラメータに関する制限をはずせなかったこと、他方でIoffe, Bodineau等による抽象論の展開により、より抽象度を深めた形での一般論の展開がなされ、この種の問題の数学的な本質は非常に良く理解される事となった事があり、我々の扱っているクラスのモデルがこの抽象論の条件を満たすかどうかをチェックするという技術的な問題が残っているのが現状である。もちろん我々の定式化の利点もあるけれども、この問題については完全に遅れをとった事を認めざるを得ない。 かわって副次的な研究テーマとして平行して研究して来たパーコレーションの問題について新しい知見を得る事ができた。もともと相転移モデルの多くはその基礎となるグラフ上に平行移動の群がグラフ自己同型群として作用している事が多く、パーコレーションの問題ではさらに考えている確率法則が平行移動の群作用に対してエルゴード的である事が相転移現象の解析の重要な鍵となっている。本研究では、平行移動のないグラフとしてフラクタルグラフを考えて、そこでのパーコレーションの相転移の問題を研究した。良く知られているのはfinitely ramifiedと呼ばれるフラクタルグラフでは臨界確率が1という自明な値になることが分かっている。このクラスを離れると、まだ良く知られていないのが現状である。唯一まとまったクラスで扱われているのはシルピンスキーカーペット格子のクラスで、やや技術的と思われる条件のもと、相転移が1点を境として起こり、臨界点以下では連結性関数が指数的なdecayをする事が示されている(いわゆる鋭い相転移:熊谷[1])。ところが、シルピンスキーカーペット格子としてもともと知られているグラフについてこの技術的条件が成立しているかどうかは1997年以来openな問題であった。本研究では分枝過程の議論を使う事で、このグラフについても同様の鋭い相転移が起こる事を証明した。この結果は学術雑誌に投稿中である。 文献 [1]T.Kumagai, in : New trends in Stochastic Analysis, (Eds.K.D.Elworthy et al.) 1997, 288-304.
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