研究概要 |
主な目的は偏微分方程式の解の形状(空間臨界点や等位面の挙動)と領域の形状や対称性との関わりについて研究することであった。この研究によって得られた新たな知見は主に次のようである。 1.ユークリッド空間の領域Ωの特性関数を初期値とする熱方程式の初期値問題の解が不変な等温面Γを一つもつのはどのような場合かを考察した。その必要条件として、ΩがΓで一様稠密であるというある幾何学的な概念を導入し、一様稠密な領域の分類を与えた。(Trans.Amer.Math.Soc., 358(2006), 4821-4841) 2.ユークリッド空間の有界領域Ωにおいて、線形および非線形拡散方程式の初期境界値問題で、初期値を零、境界値を正定数とするとき、境界∂Ωに1点で接するΩ内の球B内の解の空間積分の時刻t→0での漸近公式に∂Bと∂Ωの接点での∂Ωの主曲率が表れることを示し、拡散と領域磯何の関係を明らかにした。(Proc.Royal Soc.Edinburgh Sect.A, 137(2007), 373-388) 3.ユークリッド空間内の非有界な境界∂Ωをもつ領域Ω上の熱方程式の初期斉次ディリクレ問題で初期値を正定数とする解を考察し、もし一つの等温面が不変ならば∂Ωは超平面に限るという定理たちをΩに対するある大域的な条件の下に示した。(Indiana Univ.Math.J., to appear) 4.平面内の有界凸領域Ω上の熱方程式の初期斉次ディリクレ問題で初期値を正定数とする解を考察し、もし原点が常にホットスポットならぼ、Ωがm角形(m≧5)で原点を中心とした内接円がすべての辺に接するとき、Ωの対称性に関する新しい必要条件を与えた。(論文投稿中) 5.線形拡散方程式の初期境界値問題で初期値を零、境界値を正定数とする解の初期挙動が境界からの距離関数を用いて記述されるというVaradhan(1967)の定理を一様放物型の非線形拡散方程式の場合に粘性解の理論を用いて拡張し、不変な等位面を一つもつ解による球面の特徴付けを非線形の場合に与えた。(論文準備中)
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