研究概要 |
1.q-パンルヴェ方程式の超幾何解の研究.特に(A_1+A_1')^<(1)>型およびA_4^<(1)>型の超幾何解を詳細に研究し,解の行列式表示を得た.前者に関しては連続極限を詳しく調べ,解として得られる超幾何関数の積分表示に対して鞍点法の拡張を用いた漸近展開を考察し,函数レベルでの極限移行を示した.さらに,前者の解の行列式構造に他の離散パンルヴェ方程式で見られるものと同様の非対称性があることを示し,その構造が背後のルート系によるものであることを明らかにした. 2.パンルヴェ系の代数的定式化とその拡張.射影空間の一般の位置にある点の配置空間に作用するクレモナ変換の作るワイル群作用をτ函数のレベルの双有理変換として実現し,テータ函数によるパラメータ付けを行うことによって楕円パンルヴェ方程式とその拡張に対する定式化を与えた. 3.パンルヴェ第VI方程式の非可積分系的側面の研究.パンルヴェ第VI方程式の代数幾何学的定式化と代数曲面上の双有理写像のエルゴード理論をリーマン・ヒルベルト対応により結びつけ,パンルヴェ方程式の非線形モノドロミーがほとんどすべてのループに沿ってカオス的であることを示した. 4.超離散系の代数的研究.ベーテ仮説法に由来するKerov-Kirillov-Reshetekhinの組合せ的全単射について、その表現論的意味を明らかにし箱玉系と呼ばれる戸田方程式の超離散化に応用した。 5.パンルヴェ微分方程式の解の行列式表示と補助線形問題に関する研究.パンルヴェ第IV方程式の解のハンケル行列式表示を考察し,行列式の要素の母函数が補助線形問題の解の比に他ならないことを示した.さらにこの現象が戸田方程式にも見られることを明らかにし,パンルヴェ微分方程式特有の現象でなく,KP階層そのものの構造に起因することを示した.
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