本研究は、銀河間宇宙空間に希薄に存在する電離ガスの観測に最適なX線結像光学系の開発を行うものである。具体的な開発テーマは、Wolter II型光学系の開発、多段反射型光学系の開発、及び軟X線反射鏡面の開発である。平成15年度においては、特に多段型光学系の開発及び試作、及び軟X線複合膜及び多層膜の設計・試作について進展が見られた。 多段反射型光学系については、小型衛星計画DIOS塔載の軟X線望遠鏡をモデルに、レプリカ反射鏡の試作を行なった。従来のレプリカ鏡に比べて、入射角が大きく反射鏡ストロークが短いため、製作工程の随所で問題が生じると予想された。しかし基板成型用金型の製作、これを用いた基板成型、プラチナ単層膜を成膜したレプリカマンドレルを用いたレプリカ工程など、いずれも従来型の反射鏡相当の性能を得ることができた。また、多段一体型の反射鏡製作を導入するため、研磨加工によるレプリカマンドレルの開発に着手した。最初の試作品が完成し、現在性能評価を進めている。 軟X線反射鏡面の開発においては、10keVまでのエネルギー領域において大入射角で実用的な反射率を持つ薄膜の選択、設計、製作技術の確立が課題である。多層膜を用いた設計においては、重元素に複数の元素を用いてスーパーミラー化することで、数keVから8keV付近まで連続的な反射率を得る設計を発見した。また新たに複合膜の考え方を導入し、NeXT衛星塔載軟X線望遠鏡の光学設計をモデルとして設計研究を行なった。複合膜は、幅広いエネルギー領域に必ず存在する重元素の吸収端による反射率の不連続点を、光電吸収と臨界角を考慮して複数の重元素を積層することで無効化しようとするものである。NeXT/SXTの場合、複合膜の導入により10%以上の有効面積の向上が期待される。この設計に基いて成膜を行ない、ほぼ設計通りの反射特性を得ることができた。
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