研究課題
国立情報学研究所が管理運営している学術情報ネットワークを利用した研究計画、スーパーSINET計画は、平成19年度からSINET3計画に移行することになった。このため、新しい通信基盤に対応するための研究開発を進めると共に、平成17年度までに整備された4局6基線の観測網(臼田64m、つくば32m、鹿島34m、山口32m)で科学観測を定常的に実施することを開始した。当初の研究計画では、臼田64m、つくば32mの2局だけで、かつ自由に天体方向に望遠鏡を指向できない制約の下で、世界で初めて超高速通信回線を利用した電波天文観測を行うことにしていた。その後、学術情報ネットワークが格段に強化されると共に、電波望遠鏡を保有する研究機関(臼田64m局は宇宙航空研究開発機構、つくば32m局は国土交通省国土地理院)との共同研究に関する協議等が実を結び、月に2-3回程度ではあるが、自由に天体を追尾し、特定の天体を長時間観測することになった。超高速通信回線で観測データの伝送レートを飛躍的に高速化し、かつ長時間の天体追尾によって膨大な観測データが取得可能になった。そこで、本研究テーマであるAGNの研究だけでなく、遠方銀河や変光星の観測が可能になった。これらのことから、下に示すような画期的な研究成果が得られ、現在論文化の作業を進めている。(1)長時間位相補償積分に成功位相基準天体とターゲット天体を5分サイクルで交互に観測することで、8000秒もの長時間積分観測に成功し、本研究で確立された光結合観測網が基線感度で1.6mJyという非常に高い感度を持つことが工学試験観測で実証された。(2)CSS天体(AGNの一種)の高詳細イメージングに成功CSS天体(4C32.44)のイメージング観測に成功し、南東ジェット成分が数年前の観測に比べ異常に減光していることが分かった。(3)RS CVnバイナリ天体の検出に成功RS CVn型バイナリ天体、HR5110の検出に成功した。4000秒の長時間位相補償積分でSNR12を得た。この結果は将来電波で星本体の位置を直接高精度で決定できる可能性を示している。(4)HiZ天体(100億光年以上遠方の銀河)の観測に成功z=4から6の非常に遠方の銀河4天体の検出に成功し、そのうち1713+215(z=4.011)の放射領域が予想に反し大きく広がっていることを初めて明らかにした。
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Pubrications of the Astronomical Society of Japan 58
ページ: 777-785