研究概要 |
本年度は、当初の予定通り、核理研新ガンマ線実験室への光子ビームの標識化装置を整備し、新標識化ガンマ線ビームラインを立ち上げ、次年度の実験条件を整えた。1.2GeV STBリング内に内部標的を挿入し、ガンマ線ビームを生成する方法をとっているが、この研究開発の最初の段階では、内部標的によって乱された電子によって、きれいなガンマ線ビームを取り出すことができなかった。しかし、加速器に新たに電子シャントやステアリング等を導入することによって、周回する電子の軌道や傾きを変えるなどしてこの問題を解決した。ビームラインとして、実験に使えるようになったが、現在も、新ガンマ線ビームラインの特性を細かく調べ、改良を続けている。なお、光子ビーム標識化装置は、加速器の1つの偏向電磁石の内側にすべて挿入するというやり方を採用し、時間分解能の良い標識化に成功した。 本年度は上記の研究と平行して、SPring-8において、原子核内部におけるカイラル対称性の部分的回復に関する実験を推し進め、この研究の第1段階を終了した。後方用半球型2πガンマ線検出器(BG)は、252本の鉛シンチレーション検出器の集合体であるが、1つの故障もなくデータをとることができた。これに加えて、新たに前方用ガンマ検出器(FG)PWO252本を追加した。この検出器は、入射光子ビーム(レーザー電子光)に対して5度から15度までを覆い、電磁カロリメータとしては、これまでに誰も見たことがない超前方事象を捉えている。後方用ガンマ線検出器と組み合わせて測定を行い、無事にデータをとることができた。標的は、CH2,C, Wの3種類であった。現在、そのデータ解析を進めているところである。
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