研究課題
基盤研究(B)
量子力学の完全性についてアインシュタインらによって投げかけられたEPRパラドックスを、1964年にJ.S.ベルによって定式化された不等式(ベルの不等式)の破れを実験的に測定することで、解決を目指すのが本研究の目標である。そのためには,(1)1SO状態の生成、(2)崩壊粒子のスピン.相関測定が必要であるが、従来これらを原子核の系で実験的に実現することはできなかった。我々は、(d,2He)核反応により2陽子系の高純度1SO状態を生成し、高エネルギーにブーストされた崩壊2陽子のスピン相関を測定する偏極度計EPOLを開発することで、このEPRパラドックスの解決を目指すものであった。純度98%1SOの状態を生成し2陽子のスピン相関を測定に成功した。詳細な解析から、ベルの不等式は2.9σの標準偏差で破れていることを確認した。これは、99.6%の信頼度でEPRの主張が否定されることに相当する。今回の結果は、強い相互作用をするフェルミオン(スピン1/2)系における最も有意な成果である。異粒子系のスピン相関はほとんど測定された例がない。それは実験が非常に難しいことによるが、我々は、(d, np)核反応により陽子-中性子系ベルの不等式検証実験にも成功した。中性子のスピン偏極測定の難しさからベルの不等式の破れに関しては強い制限を与えることはできない。一方、2粒子測定についての量子力学とアインシュタインらの局所実在論の差異を記述するベルの不等式をさらに押し進めたものに、GHZ模型とよばれる理論が存在する。その検証には、陽子対の時と同様、ポジトロニウムのスピン一重項状態からの3崩壊粒子についてのスピン相関測定が必要である。そのための3光子スピン相関偏極度計を設計開発に成功した。このように当初の研究目標をはるかに上回る研究成果を上げることができた。成果については、国際会議や日本物理学会なので報告するとともに、数本の論文を現在執筆中である。
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AIP Conf. Proc. 768
ページ: 62-64
J. Phys. Soc. Jpn. 72C
ページ: 193-195
J. Phys. Soc. Jpn. Vol.72 Suppl.C