研究概要 |
量子色力学(QCD)は低温・低密度ではカラーが閉じ込められ、カイラル対称性が自発的に破れた秩序相にあるが、温度や密度を高いと,カラーが開放されカイラル対称性が回復する相へと相転移を起こす。非摂動論的QCDの手法を用いてこの相転移の性質を明らかにするのがこの研究の目的であった。当該研究期間の開始時に発見されたペンタクォークが大きな話題となり、それを契機に、エキゾティックハドロンの構造と生成反応、通常のハドロンのエキゾティック成分の分析、その他、関連する研究がホットな話題となり、有限温度・密度のQCDの視点で関連する研究を行った。 最も主要な成果を挙げると 1.QCD和則によるペンタクォークおよびエキゾティックハドロンのスペクトルの研究 QCD和則を用いた解析で、ペンタクォークの量子数と質量に関する予言を世界に先駆けて行った。その結果、質量の低い正パリティのペンタクォークは存在の可能性が低いことを指摘した。 また、軽いスカラーメソンおよび負パリティのバリオンが、テトラクォーク、あるいはペンタクォーク状態である可能性と、クォーク数の違う状態の混合の度合いを定量的にする手法を提案した。これをスカラーメソン、ラムダバリオンに適用し、いずれも多クォークのエキゾティック状態が主成分であることを示した。 2.格子QCDによるペンタクォークおよびエキゾティックハドロンのスペクトルの研究 格子QCDを用いて、ペンタクォークの量子数、質量を解析し、QCD和則による予言との整合性を調べた。この計算では、クェンチ近似の格子QCDにおいて連続状態と共鳴状態を区別するために、フレーヴァー毎に異なる境界条件を課す新たな処方を提案し、その有用性を確かめた。同じ処方を負パリティのΛ励起状態の5クォーク成分にも適用した。
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