現在大阪大学では、^<48>Caの二重ベータ崩壊測定を目的としてフッ化カルシウム(CaF_2)シンチレータを用いたCANDLES III実験装置が建設中である。本研究では、この装置を暗黒物質探索(DMS)にも適用可能なように、以下の改良を目指している。 DMSではより低エネルギー(数から数十keV)の信号を測定することになるため、更なる集光効率の向上を図る必要がある。そこで結晶の発光特性、液体シンチレータの光学特性、光電子増倍管の感度特性などを測定・調査し、更にそれに基づくシミュレーションとを合わせて検討した結果、液体シンチレータは結晶からの蛍光の波長変換層と、外部からのバックグラウンドに対する逆同時計測を行う層の2層式のシステムにすることと決定した。波長変換層では変換効率を最大にするように、また逆同時係数層では透過率と発光量が最大になるよう、それぞれの成分組成を決定した。 実際の実験装置では多数のPMTを用いて、それぞれで単一光子計数を行うことになる。PMTの増加に伴い電気的雑音信号の増加も予想される。これを排除するためには信号のPMT分布や時間分布情報を利用したインテリジェントなトリガー回路が必要である。高速動作可能なFPGAを用いたトリガー回路と、単光子信号の時間分布情報を記録する大容量のバッファメモリを搭載した回路を、計算機へ高速転送が可能なインターフェイス(VME)を用いて製作することにした。試作機等を用いて検討を進めている。 EuをドープしたCaF_2(Eu)結晶はドープしていないものよりも消光係数小さいことがわかっている。DMSでは消光係数の大きいものが、二重ベータ崩壊実験では小さいものが有利なため、Euのドープ量による消光係数の変化を測定することにした。本年度は2種類の異なるドープ量の結晶について測定を行った。今後も何種類かの結晶について測定を進める予定である。
|