研究概要 |
フッ化カルシウム(CaF_2)シンチレータを用いた二重ベータ崩壊研究用CANDLESIII実験装置を暗黒物質探索(DMS)にも適用可能にすべく改良を行った。 1.低エネルギー信号を効率よく捕らえるべく、結晶の発光特性、液体シンチレータの光学特性、光電子増倍管(PMT)の感度特性などを測定・調査し、更にそれに基づくシミュレーションにより、シンチレータ・PMT・ライトガイドの最適配置を考案した。特にライトガイドとしては反射率の高い鏡面反射材を用いて入射角が大角度になるよう(反射回数がなるべく少なくなるよう)配置することにより反射面での光のロスを最小にする構造を採用した。これを実験的に検証すべく小型のプロトタイプ測定装置を設計・製作し、現在測定を進めている。 2.最終的なバックグラウンド源であるシンチレータ内部の放射性不純物を低減するため、原料・製法の違いによる不純物濃度の変化を調べた。その結果に基づき、シンチレーション結晶の追加購入を行った。 3.シンチレータの消光係数の測定を、中性子ビームを用いて行った。比較のため、数種のシンチレータ(Euのドープなし・あり・異なる濃度)を用意し測定を行った。 4.上記において、シンチレータの種類による消光係数の変化の原因を探る研究を行った。加速器や線源などを利用して、異なる放射線(γ,p,Li)をシンチレータに照射しその発光波長スペクトルを測定した。その結果、CaF_2シンチレータは2種の波長成分を持ち、照射粒子の種類によってその強度比が変化することがわかった。今後この結果を粒子弁別に応用できないか、検討していく。 5.低エネルギー信号検出用に、信号のPMT分布や時間分布情報を利用したインテリジェントなトリガー回路系の整備を進めた。試作機を用いて小型プロトタイプ検出器に適用し、それに基づいたシミュレーション研究を行っている。
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