研究概要 |
本研究の課題-原始ブラックホールのホーキング輻射によって生成される反陽子の探索-を達成するためには,BESS-Polar測定器を用いた,より低いエネルギーの反陽子の観測と長時間観測の2点が本質的に重要である。本年度は長時間観測を実現する南極周回気球観測に向けた準備と気球観測を行った。 (1)BESS-Polar測定器の組立・調整 前年度までに本研究で開発したMiddle-TOFカウンタとデータ収集システムをBESS-Polar測定器本体に組み込み,超伝導ソレノイド,中央飛跡検出器,飛行時間測定器,太陽パネルシステム等とともに総合試験を行った。またデータ収集用ソフトウェアの開発を行った。飛跡検出器用信号処理電子回路の修正やノイズの多い光電子増倍管の交換等,地上での総合試験,宇宙線データ収集によって判明したいくつかの問題点を解決した。 (2)南極周回気球観測 測定器は2004年11月に南極に到着し,現地での最終試験の後12月13目に南極マクマード基地からNASAの大型気球を使ってBESS-Polar測定器を打ち上げた。測定器はほぼ予定通りに南極の極点を中心とする周回経路を通り,8日余りの観測の後に気球が切り離され,測定器は無事回収された。本研究で開発したMiddle-TOFカウンタとデータ収集システムは順調に動作し,低エネルギー反陽子のデータ収集に貢献した。この間,上空で約10億例の宇宙線を捉え,現在解析を進めている。
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