研究課題
CERN研究所LHC加速器は2007年に完成を予定し、14TeVの陽子-陽子衝突とともに、核子対当たり重心系エネルギー5.5TeVの鉛原子核衝突を実現し、新たなエネルギー領域に於けるクォーク物質探求を可能にする。2000年に始めた米国BNL研究所RHIC加速器による0.2TeVの金原子核衝突に於いて、私たちはクォーク物質生成を証拠付ける数々の発見をした。これらの知見を踏まえ、私たちは新たなLHCエネルギー領域に於いてクォーク物質の基礎物性を同定する。LHC加速器に導入される4実験の中で、ALICE実験はクォーク物質探求に最適化した唯一の実験装置であり、高性能光子検出器PHOSを備える。PHOSは約20,000チャネルの検出素子からなる電磁カロリメータであり、各素子は新技術の鉛タングステン酸(PWO)結晶からなる。本研究はこのPWO結晶が発する微弱な光を正確に読み出すAPD光学素子、前置増幅器、波形成型器およびデジタル化回路の開発を行い、実機製作への準備を完了することにある。最終年度に当たり、読み出し回路全系の最終設計及び仕様策定を完了し、LHC技術審査において承認を受けることを最終目標に実施した。この間、(1)読み出し回路基本設計、(2)試作機による性能評価、(3)256チャネル実証機による全系評価、(4)読み出し回路技術報告書の作成(ALICE Note,134頁)、(5)技術論文公表、(6)技術審査、(7)第1モジュール用前置増幅器及び(8)T型変換基板製作等を順次進めた。平成17年6月、PHOS読み出し回路系技術審査会に於いて提案側説明者として臨み、10月、技術審査を無事通過させることに成功した。これにより、読み出し回路系は最終仕様と承認され、当該研究課題の目標を達成するとともに、実機量産への準備を整えることができた。
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AIP, Proceedings of the Particles and Nuclei International Conference(PANIC05), Santa Fe, NM, Oct.24-28, 2005 (掲載決定)
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 550
ページ: 169-184