研究概要 |
イタリアのフラスカッティ研究所におけるΦ中間子工場は順調に運転を継続し、平成15年10月より、いよいよFINUDAグループによるハイパー核実験が開始された。データ取得は順調に調整が進み、11月の終わり頃からは、本格的な物理データの取得へと入った。実験標的としては、^6Li,^7Li,^<12>C,^<27>Al,^<51>Vの5種類を、今回は使用している。今年度のビームタイムは、平成16年3月後半まで継続し、当初予定していた250pb^<-1>の積分ルミノシティを蓄積して終了した。今回のデータ取得により得られた全データは、磁気テープにコピーして、全て日本に持ち帰ったところである。現在、本年度購入したデータ解析用計算機システムに解析プログラムシステムを移植しようとしているところである。これにより、間もなく日本側でも本格的なデータ解析ができるようになる予定である。これまでにも、データを取得しながら予備的なデータ解析を進めてきた。各検出器の各種較正にはまだまだ改善の余地が残されているものの、K中間子崩壊からの特徴的な運動量を持つμやπに対しては、ほぼ設計値に近い運動量分解能が達成されていることが確認できている。ハイパー核の生成についても、^<12>C標的に対して基底状態及び励起状態に対応するピーク構造が既に観測されている。今後の解析結果が大いに期待される。最内層のトリガー検出器について、日本側で性能改善のための検出器改造を担当することとなり、そのための準備も開始した。1テスラの磁場中で動作する光検出器の動作試験を行っており、来年度前半のうちに完成させて、FINUDA検出器に組み込むことを予定している。また、取得されたデータの中からK中間子の深い束縛状態の探索の可能性についても検討した結果、十分可能なことが判明したので、それに向けたデータ解析も進める方針である。
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