研究概要 |
イタリアのフラスカッティ研究所におけるΦ中間子工場でのハイパー核実験FINUDAは、平成15年度の終わりまでに、^6Li,^7Li,^<12>C,^<27>Al,^<51>Vの5種類の原子核標的を用いて、実験データを取得した。積分ルミノシティは、予定通り250pb^<-1>に到達した。このデータ取得により得られた全データは、磁気テープにコピーして、全て日本に持ち帰って解析を行った。各検出器の各種較正が進行しつつあるところだが、K中間子崩壊からの特徴的な運動量を持つμやπに対しては、設計値に近い運動量分解能を再現するところまできている。今後も、更に解析が進行することにより、より良い分解能の達成が期待されている。ハイパー核の生成についても、^<12>C標的に対しては、1.45MeV(FWHM)という分解能を達成し、基底状態及び励起状態に対応するピーク構造の観測に成功した。この分解能は、これまでの最高分解能に匹敵するものであり、これまでに観測されていなかったような新たな励起準位も観測されている。その他の標的についても、束縛領域に多くの事象が観測されており、今後の解析結果が大いに期待されるところである。昨年度より進めていた最内層のトリガー検出器の増強も完了し、準備が整った。また、K中間子の深い束縛状態の探索についてデータ解析を進めた結果、最も軽い束縛系と考えられるK-pp系の発見に、世界で初めて成功することができた。得られた束縛エネルギーは、約115MeVと非常に深いものとなっており、高密度状態の形成が予想される。今後、その方向での研究の端緒となることが期待される重要な結果である。中性子の解析が進むことにより、他の荷電状態の観測も可能となるはずである。シグマハイパー核の生成についても、シグマハイパー核の崩壊によって生成されるラムダ粒子を観測するという手法による解析が進行中である。
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