研究概要 |
この研究の目的は,ダイヤモンド・アンビル・セル(DAC)を用いて,ゲスト-ホストの相互作用を制御する高圧力下のラマン散乱測定により,(1)Ba_8Si_<46>における超伝導出現の起因とみられるSi(20)とSi(24)のカゴ中のBaゲスト原子の局在振動の観測とホストであるSiネットワークの相互作用を評価すること,(2)これらシリコンクラスレート化合物群の各温度及び高圧力域における構造安定性と高圧相転移,またゲスト-ホストの相互作用を明らかにし,未解決の半導体クラスレート化合物群を統一的に理解する基礎物性物理の確立を目指すことである。 -研究成果- 1.シリコンクラスレートのラマン散乱分光では,低波数域40-200cm^<-1>に出現するゲストによるフォノンモードが重要であり,現有のアルゴン気体レーザではこの領域にエミッションが多く存在するため,本補助の主要設備である半導体励起高出力グリーンレーザを用いて,これらの振動モードの観測を行い,典型的シリコンクラスレートBa_8Si_<46>において,世界に先駆けてBa原子の振動を検出した。観測したこの振動数から,超伝導へのBa原子の寄与が評価された。 2.さらに,K_8Si_<46>,I_8Si_<44>I_2,Ba_<24>Si_<100>についても同様の測定を行い,K,I,Ba原子の振動を世界で初めて観測した。 3.また,高圧力下のラマン散乱測定により,ゲスト-ホスト相互作用の評価,圧力誘起の相転移やアモルファス化に伴うケージ構造の安定性を調べた。これらの成果は,裏面の研究発表欄に見られる様に,アメリカのPhys.Rev.Lett.やPhys.Rev.B誌に公刊した。そして,これらの結果は,世界の半導体クラスレートの基礎物性物理研究に多大の寄与が期待される。
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