研究課題
基盤研究(B)
C_<60>単結晶は抵抗値が10^9程度と高い物質であるため、光伝導の測定に際して電極との接触抵抗をなくすための工夫が必要となる。本研究ではブロッキング電極とOPOレーザーのnsパルス励起を用いた飛行時間型(TOF)時間分解測定システムを構築し、励起波長をチューニングしながら光伝導の時間応答観測を行った。また、相転移と光学物性の関連を明確にするには、個々のドメインを特定した光学測定が重要である。このため、顕微ラマン散乱・蛍光と飛行時間型光伝導の同時測定を実現させることでC_<60>単結晶の特定部位について実験を行い、キャリア生成とその輸送過程、並びにその構造相転移との関連に関して以下の研究成果を得た。(1)フレンケル励起子の熱解離によるキャリア生成を仮定したシミュレーションの結果は、光伝導スペクトルの"異常ピーク"の出現の様子や温度依存性の振舞いも含めて、その特徴を良く再現することができる。すなわち、系の最低励起状態は広い温度領域にわたって、フレンケル励起子状態と束縛励起子による局在状態の二種類で矛盾無く理解することができる。(2)TOF光伝導と同一条件下で発光を観測し、光電流強度の温度に対する振舞いは熱活性的であり局在励起子からの発光強度と逆相関であることを確認した。フレンケル励起子を媒介とした占有数移を仮定したフィッティングから、吸収端近傍ではフレンケル励起子が局在状態の発光中心に捕獲される前に活性化エネルギー99meVで熱解離してキャリアが生成すると結論できる。(3)光電流は時間のべき乗で減衰する分散型伝導を示し、その主要キャリアは電子であることが判明した。分散型伝導は、分子表面の電子分布の不均一さと分子回転が各サイトのホッピング確率に分布をもたらすため、各サイトでの電子の滞在時間に連続的な分布が生じた結果と考えられる。(4)250〜260Kで構造相転移を反映した移動度の増大を確認した。これは分子配向の秩序化が、キャリア伝導経路に秩序をもたらしたためと考えられる。(5)移動度は、250K付近でわずかに増加するものの、室温から200Kにかけて温度減少とともに単調に減少し、200K以下では一転して増加する傾向を示す。この移動度の複雑な温度変化は、キャリアホッピングと分子配向の秩序化の競合過程として、200K以上の温度領域の移動度の振舞いは温度減少に伴うホッピング確率の減少、200K以下はキャリア移動を容易にするような分子回転の変化に由来すると考えられる。
すべて 2006 2005
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