研究概要 |
本研究は,水素を不純物に意図的にトラップさせ,その近傍での水素の局所運動を観測し,拡散などマクロな移動過程を評価するとともに,電子励起による電子状態変化が水素運動に及ぼす影響やその機構を明らかにし,得られた結果を利用して水素ダイナミクスを制御することを目的としている。isothermal DLTS法,IR法,ESR法などの手法を用い,Si中のC, Pt不純物と水素との複合欠陥,GaN中のMg不純物と水素との複合欠陥,転位運動に対する水素の効果,歪みSi中のErの発光などを主な対象として研究を行い,以下のような知見を得た。 1.Si中水素-炭素複合欠陥の電子準位の応力依存性を測定し,欠陥の圧電定数を決定した。炭素近傍での水素の局所移動の活性化エネルギーと前置因子に対する欠陥の荷電効果を研究し,欠陥の電子準位が電子により占有されると水素移動が促進することを明らかにした。 2.Si中の水素-白金複合欠陥の対称性と欠陥構造を決定した。さらに,白金近傍での水素の局所移動の活性化エネルギーと荷電効果を研究し,その効果が炭素近傍での運動とは全く逆であり,欠陥の電子準位が電子により占有されないと水素移動が促進することを明らかにした。 3.GaNの青色発光が高温での窒素プラズマ処理により強くなることを見出した。 4.Si, Ge, GaAs中,Si_<1-x>Ge_x/Siヘテロエピ膜中の転位運動に対する水素の影響を検討した結果,水素が転位の電子状態に影響し,それが運動促進効果の原因となることを明らかにした。 5.SiGe層の上に成長したErドープ歪みSi膜中でErの発光スペクトルを観測し,その発光強度が歪みSi膜中の応力によって増強することを明らかにした。また,Er-O-H複合欠陥の生成と発光強度との関係について研究を行った。
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