研究概要 |
多様な層厚(18〜35原子層(ML):1ML=0.283nm)のGaAs/AlAs多重量子井戸構造を試料として、フェムト秒反射型ポンプ-プローブ分光法により、励起子量子ビートとLOフォノンのコヒーレント振動に関する系統的な測定を行い、以下の研究成果を得た。 1.全ての試料において、第1サブバンドの重い正孔(HH)励起子と軽い正孔(LH)励起子による量子ビートとコヒーレントGaAs型LOフォノンの信号が同時観測され、コヒーレントLOフォノンの強度がHH-LH分裂エネルギー(励起子量子ビートの振動数に相当する)に大きく依存するという結果を得た。特に、HH-LH分裂エネルギーとGaAs型LOフォノンのエネルギーがほぼ等しいGaAs(18ML)/AlAs(18ML)多重量子井戸[(18,18)MQWと略す]において、コヒーレントLOフォノン信号が極めて大きく増幅されるということを見出した。その信号強度は、HH-LH分裂エネルギーがLOフォノンエネルギーよりもかなり小さい(35,35)MQWの約600倍となった。 2.上記1の原因を究明するために、ポンプ光エネルギー依存性とポンプ光強度依存性に関する詳細な測定を行った。コヒーレントLOフォノンの大きな増幅が観測される(18,18)MQWでは、励起子量子ビートとコヒーレントLOフォノンのポンプ光エネルギーとポンプ光強度依存性が同じ傾向を示した。一方、コヒーレントLOフォノンの増幅が観測されない試料では、異なった傾向を示した。これらの結果から、HH-LH分裂エネルギーとLOフォノンのエネルギーが共鳴する場合、励起子量子ビートが駆動力となってコヒーレントLOフォノンが増幅されるという結論を得た。また、その駆動力の起源としては、縦分極相互作用による励起子量子ビートとLOフォノンの結合であると考察した。
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