研究課題
本研究の目的は、銅酸化物高温超伝導体の興味深い問題の1つである磁場誘起反強磁性秩序の起源に関する知見を得ることである。超伝導体に磁場を印加すると量子化された磁束線が侵入するが、磁束芯内では高温超伝導体の特異な性質である擬ギャップが発達していることが知られている。このため、磁場誘起反強磁性秩序には擬ギャップが密接に関係すると考えられている。本研究では磁束芯の電子状態や擬ギャップの性質を調べるため、ビスマス系銅酸化物高温超伝導体Bi2212で走査トンネル顕微鏡(STM)実験を精力的に行った。その結果を以下に記す。1.Bi2212の擬ギャップ状態で4a×4aの電荷秩序が観測される試料とされない試料が存在することが明らかとなった。2.電荷秩序がより強く観測される試料ほど擬ギャップのサイズが空間的に不均一になっていることも明らかになった。これらの結果は、"擬ギャップ状態で観測される電荷秩序は、本来動的に揺らいでいるが、電子状態に不均一をもたらす散乱源があると、これがピン止中心となるために動的な電荷秩序は静的なものになる"ことを意味している。これまでにも「4a×4aの電荷秩序が高温超伝導体の擬ギャップ状態における隠れた秩序である」と主張されているが、本研究の結果はこのことを強く支持するものである。磁場中では磁束線がピン止中心となって静的な4a×4a電荷秩序が安定になっていると言えるが、この電荷秩序は反強磁性的な磁気秩序を伴っているものと考えられる。このような成果は、本年3月に開催される物理学会および7月に開催される高温超伝導に関する国際会議(M^2S)で報告する予定である。また、現在論文を準備しており、今年度中に投稿する予定である。
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