研究概要 |
本年度は,初年度として微視的な理論的枠組みの準備を行うとともに,これに発展的につながる継続的研究を行い,以下のような成果を挙げた。 1.f電子系の多極子秩序の平均場理論による解析 CeO.75LaO.25B6に代表される希土類ホウ化物では,f電子の秩序として,磁気秩序を担う双極子だけでなく,電荷変形を担う四極子や,さらに高次の磁気八極子も候補になる。我々は,異常な弾性的性質と微小な格子変形を,反強八極子秩序に伴う強四極子の秩序というモデルで説明した。また,一般的なサイト間相互作用の形について,対称性に基づく議論を行った。 2.多極子秩序状態からのX線散乱の理論 最近のSPring-8の実験では,四極子秩序から期待されるX線散乱強度が見られず,磁気秩序温度以下でやっと強度が出る,という結果が報告された。この結果は,表面の方向,磁場の方向に敏感に依存する。我々は四極子モーメントの縮重が外場によって解けることに注目した。表面の効果をひずみ場として取り入れた分子場近似によって,この意外な結果を自然に説明した。 3.f電子系の結晶場形成における混成効果 PrOs4Sb12などのスクッテルダイト系は、奇妙な超伝導を示すことで興味を集めている。 我々はスクッテルダイト系におけるPrのf電子結晶場状態を考察した。リガンドのp電子との混成効果と,電荷分布のクーロン力の競合を考慮すると,この系の結晶場構造が自然に理解できることを示した。 4.少数キャリアf電子系の混成効果 CeSbなどのプニクタイドでは,伝導電子数が非常に小さい。我々は,pd混成とpf混成の協力効果によって,伝導電子の状態密度にピークが生ずることを示した。これが特有の2層強磁性構造と磁気光効果の原因であることを論じた。
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