研究概要 |
平成16年度は,以下の研究を行った。 1.CeB6のX線散乱を詳しく理論的に分析し,実験結果を説明した。また新しい実験を提案した。CeB6では3つの等価な四極子秩序状態が可能である。表面の効果で,これらの縮退が解けていることを仮定した。また外部磁場によって,安定な四極子秩序が制御できることを議論した。これにより,最近の実験で得られている奇妙な結果,すなわち四極子秩序のあるII相に入っても超格子散乱強度がほとんど変化せず,磁気秩序のあるIII相で急激に大きくなることを説明した。また四極子の形状因子が,原子内f電子の形状因子とほぼ一致することを確認した。 2.多極子間の相互作用を微視的に考察した。まず,伝導帯を平面波で近似して混成相互作用がもたらす多極子間相互作用を実空間で議論した。次いで,波数空間での議論を行い,最も起こりやすい波数と対応する多極子の対称性を求めた。さらに,現実的な伝導帯をLCAO近似で考慮し,混成相互作用をSlater-Kosterの方法で扱った。これにより,CeB6では実験で観測されている四極子秩序が実際に安定になることを確認した。一方関連する系であるCeB2C2では,伝導帯構造の違いから非整合磁気構造が最も安定であることを導出した。これも実験結果を説明する。 3.核スピンと固体多重極の間の相互作用の一般形について考察を行った。これに基づきNpO2におけるNMR実験の奇妙な結果が多重波数を持つ八極子秩序状態と矛盾しないこと,むしろこの仮説を強くサポートすることを明らかにした。 4.動的平均場理論による実際物質のバンド計算プログラムの開発を進めた。また,CeRh3B2の強磁性の機構を理解するために予備的な変分計算を行った。
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