研究概要 |
平成17年度は,以下の研究を行った。 1.Cel-xLaxB6のIV相の秩序変数は長年の謎であったが,これを磁気八極子と同定した。我々の反強的配列八極子モデルは,SPring8とグルノーブルのESRFで行われたX線散乱結果を矛盾なく説明した。また磁気双極子や軌道四極子は実験結果と矛盾することを示した。この成果は,J.Phys.Soc.JpnのEditors' Choiceとなり,新聞報道でも紹介された。 2.アクチナイド元素のうちNpを含む3元化合物NpTGa5(T=Co, Ni, Rh)の多彩な磁気秩序状態を統一的に説明するモデルを提案し,複数の秩序状態を自然に説明した。多様な磁気秩序をもたらす原因は,Npの起動自由度であることを示し,秩序に伴って結晶変形がおきることを予言した。 3.CeRh3B2はCe化合物で最も高いキュリー温度(120K)を持ち,強い異方性,小さいモーメント,伝導電子の逆分極など種々の異常を示す。この強磁性の機構は長年のなぞであったが,我々はRhの4d分子軌道とこれをはさむCeの4f電子の混成を重要視するモデルを提案し,変分モンテカルロ法による計算を行なった。この結果,平坦バンドによる強磁性が本質であることを示した。 4.動的平均場理論によるバンド計算プログラムコードを開発した。Ce化合物の電子状態に於いてはスピン軌道分裂や結晶が重要であるが,従来の動的平均場バンド計算では,これらを取り入れることは難しく,取り入れることはできなかった。結晶場分裂等を取り入れ、良い近似計算の可能なNCA法を拡張し、これをLMTOバンド計算に組み,定量的な計算を可能にした。 5.軌道と磁性の絡んだ秩序を示すCeSbに適用し,常磁性ではフェルミエネルギーに相関の強い4fバンドが現れ,輸送実験と矛盾しない10度程度の近藤温度となることを示した。この物質は半金属であるため,局所密度近似のバンドのc-f混成では実験から予想される近藤温度より極めて低く、いままで矛盾点とされていた。
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