研究課題/領域番号 |
15340106
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
田口 康二郎 東北大学, 金属材料研究所, 助教授 (70301132)
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研究分担者 |
岩佐 義宏 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (20184864)
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キーワード | 金属内包フラーレン / 薄膜 / 電界効果トランジスター / 光吸収スペクトル / ホッピング伝導 / バンド伝導 |
研究概要 |
今年度は、ランタン内包フラーレン(La2@C80)薄膜を真空蒸着によって作製し、その電気的、光学的特性を調べた。その光吸収スペクトルから求めた吸収端は0.5eVから0.6eV程度に位置し、また、1.5eV程度に吸収帯があることが分かった。この吸収帯は、トルエンに溶かした溶液の状態のスペクトルでは明瞭に観測されないもので、薄膜化することによって、パリティ禁制であった原子内遷移が電荷移動型遷移となって、強度が増大したものと考えられる。また、直流電気伝導度は熱活性化型の温度依存性を示し、その活性化エネルギーΔは0.2eV、2Δの値は0.4eVとなった。この値は、光学測定から求めた吸収端の値に近い値であり、バンドギャップを超えて熱励起されたキャリアによる伝導が起こっている可能性を示唆している。しかしながら、この可能性は、電界効果によってキャリア導入された薄膜の伝導度測定によって否定された。この測定は二酸化珪素上に超高真空中で蒸着した薄膜を用い、バックゲートの配置で行った。ゲート電圧スウィープから求めた電界効果移動度は1.1x10^<-4>cm^2/V/sと非常に低く、この値から求めたキャリアの平均自由行程は分子間距離よりも短い値であり、これはバンド伝導が起こっていないことを強く示唆している。実際、蒸着した薄膜試料に対してX線回折及び電子線回折を行い、薄膜がアモルファス的な状態になっていることが明らかになった。このため、現段階での電気伝導は、フラーレン分子間もしくは、極めて小さなグレイン間で、電子がホッピングすることによって移動度が低くなっており、その伝導機構はバンド的な描象とは相容れないものである。従って、良質の薄膜を作製することが必要であり、そのような薄膜において、物質固有の物理定数を引き出すことが今後の課題である。
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