研究概要 |
銅酸化物超伝導体とBi系高温超伝導体で、共通のフォノン異常が見つかっている。この原因を探る上で、同様に転移温度が20Kを超えるこのNa_xHfNCl系超伝導体で、同様なフォノン異常が見られるかどうかは、互いの相違点を知る上で、重要なことである。試料が粉末でしか得られないことから、フォノン分散を完全に測定することはできていないが、合成の難しいこの試料で、英国ラザファード研究所ISISのMARI分光器を用いて、以下のようにフォノン異常を見出すことに成功した。 T_c=22Kのx=0.27と0.38の2種類:のNa_xHfNCl超伝導体について、中性子粉末非弾性散乱実験を行った。その結果、例えば前者の試料では、E=15,29,76,と81meVで、温度に依存したフォノン異常が見つかった。そのなかで、Q=6 A^<-1>で、E=14.5meVのフォノン異常は両方の試料で再現され、T_cよりもずっと高い40Kから、その異常が始まることを発見した。そのフォノンは、ab-面内のE_uモードであり、主に塩素とハフニウム原子が振動している。この振動は、バンド構造を変調するものであり、キャリアの不均一性と関連して、フォノン異常を引き起こしている可能性がある。またT_cよりもずっと高温から観測されることから、擬ギャップとの関連も興味を持たれる。これに関しては、トンネルスペクトルでも同様な異常が観測されることや、ミューオンの振動からもT_c以上から超伝導クーパー対が存在する可能性が示唆されることから、2次元系特有の超伝導揺らぎが強く効いた結果がフォノンにも現れたと思われる。
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