研究課題/領域番号 |
15340110
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
長田 俊人 東京大学, 物性研究所, 助教授 (00192526)
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研究分担者 |
大道 英二 東京大学, 物性研究所, 助手 (00323634)
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キーワード | 有機導体 / 低次元電子系 / スピン密度波 / 微細構造 / ヘテロ構造 / 電界効果 / 磁気抵抗角度効果 / FET構造 |
研究概要 |
本研究の目的は、スピン密度波(SDW)状態にあるTMTSF系有機導体や磁場中で密度波状態にあるグラファイトについて人工微細構造を作製し、境界条件を制御することにより密度波相の変調を試みることであった。このためにまずグラファイト細線構造形成を例にプロセスの条件出しを行った。プロセスは、スーパーグラファイト(モザイク状の高配向グラファイト多結晶)の結晶片を粘着テープを用いて1ミクロン以下の厚さに劈開した後、ワイアのマスクをセットして、ECR(電子サイクロトロン共鳴)イオンシャワー装置を用いて酸素プラズマによるドライエッチングすることにより行う。以上の工程により幅10ミクロン以下の細線構造の形成が可能となった。細線とバルクの磁気抵抗測定を行い、Shubnikov-de Haas振動の減衰率を比較することで、プラズマプロセスが細線グラファイトにダメージを与えていないことを確認した。グラファイトは100T以上の超強磁場で種々の密度波転移を示す可能性が示唆されている。細線化したグラファイトを用いてパルス超強磁場下の渦電流発熱を局限して伝導測定を実行した結果、90T付近の超強磁場領域に新しい磁気抵抗の構造を見出した。 FET構造による電場効果を研究するまでには至らなかったので、代替の実験としてバルクの導電性結晶に電極により層間方向に強電場を印加し伝導物性の変化を調べた。擬1次元導体の基本的磁気抵抗角度効果であるLebed共鳴は半古典的には1対の平板状フェルミ面上の電子軌道の整合性(周期性)に起因する。層間に強電場をかけると各々のフェルミ面上の電子軌道が異なった方向に傾くので、対応するLebed共鳴は2重に分裂する。この効果を半古典論および量子論的トンネル描像により説明し、有機導体α-(BEDT-TTF)_2KHg(SCN)_4を用いた実験で実証した。
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