研究課題
基盤研究(B)
本研究の目標は、スピン/電荷密度波相転移を示す有機導体やグラファイトの人工微細構造を作製し、境界条件の操作により密度波物性の制御を試みることである。この人工微細構造を実現するプロセス技術として、本研究では電解再結晶法による有機導体ヘテロ接合構造の作製と、酸素プラズマエッチングによる微細加工の2手法の確立を試みた。また人工構造に加え、強磁場による軌道効果や強電場による空間非対称性の導入による密度波物性の変調も試みた。具体的な研究成果の概略は以下の通りである。1.電解再成長法により(TMTSF)_2PF_6/(TMTSF)_2ClO_4接合構造の作製を行い、再成長部分が良好なバルク単結晶としての物性を示すことを確認した。しかし接合付近には0.1〜1μm程度のクラックが多数発生しており、マクロな電解再成長法では、一様なエピタキシャル接合構造の作製は困難であることがわかった。2.酸素プラズマによるグラファイト細線の微細加工プロセスを確立した。細線化により渦電流による発熱効果を抑制した試料を用いて、一巻きコイル法による100T級パルス超強磁場下での高周波伝導測定に成功し、90T付近の超強磁場領域に新しい磁気抵抗の構造を見出した。理論的に予言されている超強磁場領域での新しい密度波転移である可能性がある。3.導電性の密度波物質α-(BEDT-TTF)_2KHg(SCN)_4の層間方向に強電場を印加して、層間磁気抵抗の角度依存性を調べたところ、平板状フェルミ面に起因するLebed共鳴のピークが強電場の印加によって2つに分裂する現象を新たに見出した。これは電場により2枚の板状フェルミ面上の電子軌道が非対称になった結果であると解釈される。
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