これまで超伝導ギャップにおけるノードの存在は磁場侵入長、比熱、NMR等の方法を用いて明らかにされてきた。しかしながらこれらの方法ではノードの方向まで決定することは事実上不可能であった。ノード構造を決定する最も直接的な方法は光電子分光や位相敏感法を用いた方法である。しかしながらこれらの方法は現在までのところ高温超伝導体以外の超伝導体には適用できていない。またこれらは表面のプローブであり固体表面とバルクが同じ対称性を持つかどうかは自明ではない。したがって異方的超伝導体に関する膨大な研究が国内外でなされてきたにもかかわらずその超伝導ギャップ構造の詳細はほとんどわかっておらずその超伝導発現機構の解明は遅々として進んでいないのが現状である。本プロジェクトは「超伝導のギャップ構造をバルクの測定で決定できるか?」という問題意識のもとで始められた。平成16年度は主として(1)異方的超伝導体の超伝導ギャップ構造(2)空間的に不均一な新しい超伝導状態(3)非フェルミ流体状態での輸送現象の研究を行った。(1)では反強磁性と超伝導が共存し反強磁性スピン波が超伝導と強く結合するUPd_2Al_3および空間反転対称性が破れた超伝導体CePt_3Siの超伝導ギャップ構造を熱伝導により調べた。(2)では準2次元重い電子超伝導体CeCoIn_5の低温強磁場超伝導相で40年前にその存在が予測され未だ確認されていないFFLO相の存在を超音波と核磁気共鳴により明らかにした。(3)ではCeCoIn_5は量子臨界点近傍にありノーマル状態において非フェルミ流体的振る舞いが観測される。我々はホール効果、磁気抵抗、ネルンスト係数の測定を行いこの非フェルミ流体領域における輸送現象の異常性を研究した
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