研究課題
基盤研究(B)
本研究はキャリアーがドープされた特殊な電子状態をもつ有機超伝導体の超伝導相およびその相と密接に関係した周辺電子相の熱力学的特性を微小セルを用いた新しい比熱測定装置を用いて解明することを目的として計画された。研究期間前半で整備した装置を用いて、ドナーとアニオンの間の不整合な関係から、定比組成からずれたタイプの超伝導体を中心にミクロ熱容量測定をおこなった。まず、バンド充填度が3/4である電子状態に3%程度のホールがドープされた超伝導体である(MDT-TTF)(AuI_2)_<0.436>(T_c=4.3K)のゼロ磁場、磁場下での測定により、3.8K付近に超伝導転移に特徴的な熱異常を検出した。転移そのものはブロード化しているが6Tまでの磁場での対破壊による転移の変化が明確に観測された。ドナー層とアニオン層の構造的な不整合が、ドナー層に特徴的な静電ポテンシャルを及ぼし、転移のブロード化を起こしていることが解析から明らかになった。また10K級の高い超伝導転移温度を与えることで知られるK型の構造をもつBEDT-TTF塩、κ-(BEDT-TTF)_4Hg_<2.89>Br_8に対する磁場中の熱容量の測定も行った。その結果、極低温において(1)アニオン中にあるHg鎖による格子熱容量の次元クロスオーバー現象が約2K程度でおこる(2)反強磁性的なスピンの揺らぎによる電子熱容量係数γが通常のκ型塩の倍程度まで増幅する(3)超伝導転移に基づく熱異常が、バルクの性質として顕著な冷却速度依存性を示すことが明らかになった。特に(2)は有機超伝導を引きおこす強相関電子系ならではの特徴として、遷移金属化合物の物性と対比しても興味深い。
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