超低温度核磁気共鳴映像法用の新冷凍設備、および周波数可変MRIシステム等を完成させた。MRI測定の安定度と解像度も従来より大幅に向上させることができ、また撮像に要する時間も大幅に短縮することができた。その結果として従来法では非実用的な時間を必要とした3次元の実空間像を30分で撮影することができるようになり、飛躍的な情報量を元に数々の現象を精査することができた。U2D2相の磁壁が従来の二次元測定より推定していた通り[110]面であることが仮定なく決定された。CNAF相とU2D2相の間を外部磁場を変化させて行き来したときの安定相の発展の様子を測定した。安定相の時間発展は二段階に分類され、第一段階では指数関数型の時間依存を示し、核生成機構に支配されていることがわかる。生成した安定相の核は高速に成長すると同時に潜熱放出により周辺の不安定相も含めて温度変化することにより成長が止まる。この核生成&限定成長を試料の各所にて独立に行い、試料全体の温度が2相共存温度に到達した所で第一段階が終了する。第二段階においてはこの温度変化が固液界面を通過する熱流により解消され、固液界面近傍より内部に向かって試料全体が安定相に転移する。これらの空間不均一な時間発展の様子をMRIにより測定することができ、またモデル計算によっても二段階機構を説明できた。このように安定相は結晶内の随所から発生するのであるが、2相を行き来したときにU2D2相での磁区分布が再現するメモリー効果を説明するため、安定相の核生成サイトとして結晶学的線欠陥に付随する磁気的面欠陥が関与している可能性が高いことを指摘した。
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