強相関電子系の量子臨界点近傍の磁気励起と量子相分離の解明

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15340118
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 石田 憲二 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (90243196)
• 研究分担者: 髭本 亘 高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 助手 (90291103) ; 門野 良典 高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 教授 (10194870) ; 中辻 知 京都大学, 大学院・理学研究科, 講師 (70362431)
• キーワード: 強相関電子系物質 / 重い電子系物質 / 酸化物銅超伝導体 / 核磁気共鳴 / ミュオン共鳴 / 量子臨界点

研究概要

本年度は以下の研究を行い、成果を得ている。
磁気量子臨界点近傍に位置する2次元物質YbRh_2Si_2の磁気励起
上記の物質の臨界磁場近傍の磁気相関を、μSR測定を用いて調べた。不純物を含まず残留抵抗が小さいことを反映して、緩和率は単一の成分でfitすることが出来た。また最低温での緩和率の磁場依存性は、スピングラス物質がグラス温度で示す振る舞いと似ていた。これらの結果から、この物質での臨界点での磁気励起の性質として、均一な磁気揺らぎが低温でfreezeするような描像が得られた。またLaを5%-dopeして試料についても17mKの低温までμSR実験を行った。lattice-parameterは増大することから、La-dopingは負の圧力効果に相当する。実験では17mKの低温まで磁気異常が検出されず、不純物効果に対してもCe系と対称である(electron-hole symmetryが成り立つ)ことを明らかにした。
三次元物質YbCu_5の低温物性測定
立方晶YbCu_5の磁気励起を80mKまで調べた。2K以下通常の重い電子系的な振る舞いをすることがわかった。超伝導や、磁気異常は今回の測定では見つけることは出来なかった。
酸化物高温超伝導La_<2-x>Sr_xCuO_4(LSCO)の磁性と超伝導の共存
反強磁性相と超伝導相の境界に位置する、単結晶LSCO(x=0.07)の試料で反強磁性と超伝導の関係を微視的に調べるために、μSRの実験を行った。その結果超伝導と反強磁性がミクロに共存していると示唆する結果を得た。
Bi-layer Ru酸化物Sr_3Ru_2O_7の量子臨界点での磁気励起
Sr_3Ru_2O_7の量子臨界点での磁気励起を^<17>O-NMRを用いて調べている。

研究成果

• [文献書誌] K.Ishida, et al.: "Low-Temperature Magnetic Order and Spin Dynamics in YbRh_2Si_2"Physical.Review.B. 68・184401. 1-14 (2003)
• [文献書誌] K.Ishida, Y.Ihara, et al.: "Unconventional Superconductivity and Nearly Ferromagnetic Spin Fluctuations in Na_xCoO_2・yH_2O"Journal of the Physical Society of Japan. 72. 3041-3044 (2003)
• [文献書誌] K.Ishida, D.E.MacLaughlin, et al.: "μSR and Low-Temperature Antiferromagnetism in the Ordered Non-Fermi-Liquid Compound YbRh_2Si_2"Physica B. 329-333. 589-590 (2003)
• [文献書誌] K.Ishida, et al.: "Evolution of Normal-State Magnetic Fluctuations by Ca and Ti Substitutions in Sr_2RuO_4:^<87>Sr-NMR Study"Physical Review B. 67 214412. 1-6 (2003)
• [文献書誌] K.Ishida, et al.: "Ferromagnetic Correlations in Ca-doped Sr_2RuO_4:^<87>SrNMR Study"Journal of Low Temperature Physics. 131. 1227-1236 (2003)
• [文献書誌] 石田憲二, 藤秀樹, 北岡良雄: "強相関電子系におけるスピン三重項超伝導"固体物理. 38. 179-200 (2003)