研究概要 |
本研究では従来不可能であった5GPa域高圧下までのNMRを行うことにより,高圧下で誘起される強相関電子系の電荷ゆらぎや軌道ゆらぎ効果をミクロスコピックな視点から明らかにすることを目的としている.本年度は以下の研究を行なった. 1.CeCu_2Si_2の圧力誘起Tc増大 Tcが増大する4GPaまでのCu-NQRの緩和時間T_1の温度依存性を調べた.常伝導状態の1/T_1は加圧により抑制され,Tcが増大する圧力領域においてはKorringa則(T_1T=const.)に従う.これは磁気ゆらぎが小さくなっているにもかかわらず,T^3が増大することを意味しており,磁気ゆらぎ以外の超伝導機構が関与している可能性を示唆している.一方,超伝導状態の1/T_1は,Tcが増大する圧力領域においてもT^3に比例するギャップレス超伝導の振舞いを示し,クーパー対の対称性に変化がないことを示唆する.Tcが増大する圧力領域においては,1/T_1が0.6K以下の低温で温度変化しないことが観測され,現在四重極緩和の可能性を検討するためT_1の同位体効果を実験中である. 2.PrFe_4P_<12>の圧力誘起金属-絶縁体転移 高圧下で誘起されるM-I転移の機構解明のため,P-NMRを行なった.M-I転移にともないNMRの信号強度の減少が観測された.絶縁体相は非磁性であり,また伝導電子がいなくなるために極端に緩和時間が長くなると考えられる.転移点以上で観測されている信号には緩和時間の異常が見られないため,M-I転移は一次転移的であることが明らかになった. 3.高圧セルの開発 より高い圧力の発生のため,高圧セルのデザインの最適化を検討したが,顕著な改善はみられなかった.今後,さらに検討を進めていく必要がある.
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