今後3年間にわたる当該課題研究の初年度に当たり、準備となる基礎的課題に取り組んだ。まず第一に量子渦が一本存在する場合の集団励起について考察した。渦糸がタテ方向に振動するモードは古典的な渦でも存在しケルビン波として知られている。フランスの実験グループによって最適ボーズ・アインシュタイン凝縮(BEC)系に於いて四重極モードの崩壊プロセスの中でこのケルビン波を観測することに成功した。この実験を理論的に解析し、このモードの同定並びに分散を求め、観測データを説明した。更に渦が多数存在する渦格子状態に考察を進めた。この場合Tkachenkoモードとして知られる渦格子の振動モードが存在するが、このモードの分散を系の回転周波数の関数として求めた。特に回転周波数がBECが崩壊する臨界値に近づくに従ってソフト化することを見出した。この周波数依存性はコロラド大の実験グループの観測とよく合致し、我々の理論的なアプローチの正しさを証拠立てている。今後はこれらの考察を内部自由度を有するスピノールBEC系に拡張し実験の提案をする予定である。
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