研究概要 |
超流動ヘリウムの物理は、非粘性の超流体と粘性をもつ常流体が混合する二流体モデルによりよく記述され、比較的高温域では、量子渦は常流体との相互摩擦により減衰することが知られている。近年、常流体が存在しない極低温領域での量子渦タングルの減衰が観測され、そこには高温域にはない新たな物理が期待されている。本研究は、そのような極低温領域における量子渦の運動を解明することを目的とする。以下、超流動ヘリウム、および中性原子気体ボースアインシュタイン凝縮系に関して、得られた成果を述べる。 超流動ヘリウム:回転する円筒容器中の量子渦のダイナミクスを調べ,分極タングルの出現を明らかにした.また,小さいスケールでの散逸を入れたグロスピタエフスキー方程式の数値解析を行い,乱流の最も重要な統計則であるコルモゴロフの-5/3則が成り立つことを示した. 中性原子気体ボース凝縮系:2成分ボース凝縮系に関する理論的研究を行った.異種成分間相互作用に依存して,最初混ざっていた2成分が変調不安定性によりやがて相分離する挙動を明らかにした.実験結果との一致は良い.また2成分間に内部ジョセフソン接合に相当するとき,多彩な渦状態が出現することを明らかにし,特に「渦分子」の形成をいう新しい概念を提出した.
|