研究概要 |
超流動ヘリウムの物理は、非粘性の超流体と粘性をもつ常流体が混合する二流体モデルによりよく記述され、比較的高温域では、量子渦は常流体との相互摩擦により減衰することが知られている。近年、常流体が存在しない極低温領域での量子渦タングルの減衰が観測され、そこには高温域にはない新たな物理が期待されている。本研究は、そのような極低温領域における量子渦の運動を解明することを目的とする。以下、超流動ヘリウム、および中性原子気体ボースアインシュタイン凝縮系に関して、得られた成果を述べる。 超流動ヘリウム: (1)巨視的波動関数が従うグロス・ピタエフスキー方程式の数値解析を行うことにより,量子渦が作る超流動乱流(量子乱流)が,古典流体の最も重要な統計則であるコルモゴロフ則を示すことを明らかにした. (2)超流動ヘリウム3において,常流体が存在しない超低温下で,量子渦の不安定性と超流動乱流の発現を明らかにした.これはヘルシンキ工科大学との共同研究である. 中性原子気体ボース凝縮系: (1)回転する三次元ボース凝縮体中の量子渦格子形成のダイナミクスを明らかにした.定性的には2次元と同じであったが,ケルビン波の形成と運動,幽霊渦が作る位相乱流などが見られた.
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