研究課題/領域番号 |
15340125
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
三池 秀敏 山口大学, 工学部, 教授 (10107732)
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研究分担者 |
羽野 光夫 山口大学, 工学部, 教授 (70108265)
野村 厚志 山口大学, 教育学部, 助教授 (40264973)
山口 智彦 産業技術総合研究所, ナノテクノロジー研究部門, 主任研究員 (70358232)
横山 悦郎 学習院大学, 計算機センター, 教授 (40212302)
雨宮 隆 横浜国立大学, 大学院・環境情報研究院, 助教授 (60344149)
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キーワード | 反応拡散系 / 自己組織化 / ラセン状対流波 / 階層構造 / パターン形成 / BZ反応 / 流体現象 / 散逸構造 |
研究概要 |
今年度は、ラセン状対流波の発生メカニズムを解明するため、1)反応・拡散・対流系の数値シミュレーションにおける界面の粘弾性特性を考慮したバネモデルの導入と数値実験、2)対流波の重力効果を調べるための微小重力実験(岐阜県土岐市MGLAB落下棟)を中心に研究を進めた。特に後者の実験は、日本宇宙フォーラムが募集した「第7回宇宙環境利用に関する公募地上研究」に応募し、宇宙利用先駆研究として採用され、土岐市日本無重量研究所(MGLAB)での10回の落下棟実験を実施することが出来た。約4秒間の微小重力環境が利用でき、Belousov-Zhabotinsky(BZ)反応で観測される化学反応波に伴う流体現象の重力効果に関し、いくつかの知見が得られた。 従来の研究で、化学反応波に伴う流体現象に関しては、 1)単一の化学反応波に伴う対流(1988年)、 2)大きな流体現象を伴い加速的に伝播する化学反応波(Big Wave:1992年)、 3)ラセン状化学反応波の波列が励起する振動的対流(1988年)、 4)ラセン状化学反応波が自己組織化する、伝播する対流波(1995)や回転するラセン状対流波(2003)、 など多様なパターンダイナミックスが観測されてきた。1995年の伝播する対流波を除いて、殆どの現象が代表者らの実験グループで見出されてきた。この中で、最も単純なケースである1)の単一の化学反応波に伴う流体現象ですら従来のモデル(反応拡散+対流モデル)では説明できていなかった。 今回、昨年度に引き続き反応溶液界面一層に界面の粘弾性特性を考慮した「バネモデル」を提案し、数値実験で詳細に調べた。その結果、従来のモデル(Matthiessen et al.やDiewald et al.1996)では説明できてなかった化学反応波の波頭前方の長い対流ロールの存在が説明できた。また、化学反応波の波列による対流波や振動的流れの構造も再現でき、上記の5つの現象のうち3つの現象の基本構造が理解できるようになった。 一方、対流波の本質に迫る目的で、10回の微小重力実験を実施した。その結果、1)微小重力環境下で気・液自由界面を持つBZ反応実験が可能である、2)容器底面を親水性、側面を撥水性に制御する事でメネスカスによる液面の変動を抑えられる、3)落下中(微小重力下)において、化学反応波が大きく変形を受けていることが観測され、微小重力下での対流現象の増強の可能性がある、4)落下直前の状態において、光学干渉計を用いた界面の形状が観測できた(Big Waveの伝播に伴う干渉縞の変形など)、などが明らかとなった。
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