(1)平成15年度 回転する中性原子は磁場中での荷電粒子と同じ振る舞いをする。従って、超伝導や磁場中での2次元電子気体で観測されたものと同じ現象が回転するボース・アインシュタイン凝縮体(BEC)においても観測されることが期待される。このような予測のもとに、我々は高速回転する二次元BECの性質を研究した。その結果、全角運動量がN(N-1)に等しくなると励起ギャップを持つゼロエネルギーのラフリン状態が現れることを見出した。更に、ラフリン状態の上にはロトン的な1粒子励起が現れることが見出された。ヘリウムとは異なり、このスペクトルはフォノン構造を持たない。長距離クーロン相互作用する分数量子ホール系においても同様にフォノンブランチを持たないロトンスペクトルが観測されているが、今回、短距離相互作用をする系において同様な構造が見出されたことは新たな知見をもたらすものと期待される。 (2)平成16年度 BECは通常、トラップポテンシャルに閉じ込められた状態で生成される。このため、集団モードなどのBECの基本的な性質は主としてトラップの周波数によって規定され、相互作用の効果はそれに対する補正として現れる。我々はトラップポテンシャルが存在しなくても、BECが自らの相互作用で凝縮する可能性について研究してきたが、今回、フェッシュバッハ効果により相互作用の強さを時間的に振動させることによりそのようなBEC dropletができることを見出した。これは、超流動状態の気体相における初めての自己束縛状態である。 (3)平成17年度 前年度に引き続き、引力相互作用するBECが閉じ込めポテンシャルがなくても安定に存在できるかどうかという問題に取り組んだ。昨年度にこれが2次元系の場合に可能であることを示したが、本年度は3次元系の場合について調べた。その結果、3次元系の安定化は、系に散逸がある場合は可能であるが、散逸がない場合は安定化できるパラメター領域を見出すことはできなかった。他方、密度をリアルタイムでプローブすることにより相互作用の強さをフィードバックすれば安定化できることが明らかになった。
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