研究概要 |
本研究はレーザーの短パルス化の極限を大きく押し進め、それによって切り開かれる新分野を展望して実行された。具体的には、ナノ秒の単一周波数レーザー光を基本として、それをコヒーレントに運動する高密度分子集団を用いて広帯域に変調させることで超短パルス光を発生させようというものである。そのような分子状態(最大コヒーレンス状態)は、単一周波数化した二波長のナノ秒ロングパルスレーザーを用いて、分子のラマン遷移を断熱的(数百MHzの非共鳴)に時間発展させることで実現可能である。ひとたび最大コヒーレンス状態が実現されると、効率の良い広帯域サイドバンド光の発生が1コヒーレント長内でおこり、結果としてサイドバンド光は「位相整合の制約を受けずに」励起レーザー光と同軸に発生する。本研究において、200nm〜1.9μmの広帯域(45,000cm^<-1>)にわたる光変調を実現し、さらに、その一部を位相制御することで、10fsの超短パルス列を安定に形成できることを、よく確立した手法である二倍波発生自己相関法を用いて定量評価した。 以下、この三年間で得た成果の要点をまとめる。 1)125THz(振動)、及び10THz(回転)の超高周波分子変調器(媒質を構成するすべての分子がコヒーレントに振動、回転する最大に近いコヒーレンス状態)を実現した。 2)1)の成果をベースに真空紫外〜赤外(〜70,000cm^<-1>=〜2,100PHz)にわたる超広帯域の変調サイドバンド光を高効率に発生させた。 3)発生した超広帯域サイドバンド光に対して周波数位相制御をおこなうことで、10フェムト秒の超短パルス光を10THzの超高繰り返しで安定に発生させた。
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