研究課題/領域番号 |
15340131
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
白田 耕蔵 電気通信大学, 電気通信学部, 教授 (80164771)
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研究分担者 |
鈴木 勝 電気通信大学, 電気通信学部, 教授 (20196869)
桂川 眞幸 電気通信大学, 電気通信学部, 助教授 (10251711)
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キーワード | 固体水素 / 核スピン / 量子コヒーレンス / 近接場 / ナノファイバー |
研究概要 |
波長2.4ミクロンのレーザー単一周波数OPOレーザーにより、オルソ水素の振動回転スペクトルを偏光依存性を含めて系統的に測定した。測定温度3Kでのスペクトル線幅は半値半幅で1-2MHzであり固体のスペクトル線幅としては異例に狭く、気相のレーザー冷却原子の線幅に匹敵するものである。また、スペクトルは間隔が約10MHzの3本のスペクトル線に分裂する。スペクトル幅及び分裂間隔は固体水素結晶の作製条件により大きく異なり、結晶成長温度14K近傍での温度と圧力の管理が極めて重要である。この分裂は定性的にはオルソ水素の磁気量子数が結晶場により3本に分裂した効果によるものであると考えられる。しかしながら、定量的な解釈には未だ到達していない。 一方、固体水素中に強いレーザー場を実現するための超微細光ファイバー技術及びその物理の研究は大きく進展した。現在では、直径1μmから400nmの光ファイバーを透過率80%以上でルーチン的に作製できる。このような超微細光ファイバーについては、世界の各所でこの2年間に様々な視点からの研究が進展しており、とりわけサブミクロン直径の光ファイバーは「ナノファイバー」と呼ばれるようになった。本年度においては、ナノファイバー近傍での原子・分子の振る舞いを解析した。ナノファイバー近傍では光のモードは伝播モードに集中するため、ナノファイバー近傍の原子・分子の振る舞いは自由空間とは大きく異なり、かつ光と原子・分子の双方がサブミクロン領域に閉じ込められる状況が実現できるため、自由空間の光学過程とは異なる新しい光学過程が実現できることを理論的に示した。実験的にもナノファイバー近傍の光応答を測定し、自由空間とは大きく異なる特性の観測に2006年2月に成功した。この観測はナノファイバーに関わる研究を、固体水素からより普遍的な量子光学の研究に展開する重要な契機となりえる。
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