研究概要 |
ファイバーカップラーを用いたコヒーレントビーム結合法のスケーリング理論の構築を行った。複合共振器は,N本のレーザーアームからなる多重干渉を,波長,アーム長の関数の実効反射率R_<eff>を有する実効的ミラーと捉えたFabry-Perot共振器とみなすことができる。実際の実験条件に合わせるために,アーム長を10±0.5mの範囲で任意に選んで加算効率および実効反射率を期待値として求めたると,前年行っていたN=2〜8のErファイバーレーザーの加算実験とよく一致した。実験で使用したファイバー回折格子のバンド幅(0.6nm)の場合,Nの増加とともに加算効率が低下し,N=8では実験結果の82%を説明する。それでも加算効率は他の加算法に比べると十分高いと言える。バンド幅を100nmにするとN>20でも90%以上の加算効率が得られると予測された。 この理論予測の下、レーザー帯域を広げてN=8の実験を行った。ファイバー端面鏡(R>99.7%,1500〜1600nm)とFresnel反射でErファイバーレーザーを8本構成し,0.33〜0.44Wの出力を得る。これらを4×4及び2×2の等分岐ファイバーカップラーで結合することにより,単一ポートから出力2.65Wを得,加算効率は85%へと向上した。帯域を広げたことにより干渉不安定性が抑制され出力安定性が大幅に向上した。スペクトルの半値全幅は25MHzとなり,結合前の個々のレーザーのスペクトル幅は約0.1nmであるから,ファクター500の狭窄化が実現したことになる。縦モード間隔は約7MHzであるから4本程度の縦モードが励振しているに過ぎない。アーム長の異なる複合共振器においてはアレイ数が増加するほどVernier条件が厳しくなり,線形状関数が狭帯域化するという理論でよく説明できた。狭帯域高出力レーザーに向けた有望な手法であると期待される。
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