研究概要 |
Y字型複合共振器によるファイバーレーザーアレイのコヒーレントビーム結合の発展的研究を行った。まず8個のEr添加ファイバーレーザーを8×8の等分岐ファイバーカップラーで結合し,加算効率85%は提唱したスケーリング理論と一致した。この際Vernier効果によりスペクトルの狭帯域化が起こり,線幅12MHzの単一バンド発振となっていることを確認した。ファクター10^4の狭帯域化が実現しており,狭線幅高出力ファイバーレーザーとしての可能性を提起した。アレイ長揺らぎによる絶対波長の不安定性の問題を見出し,今後アレイ長差の最小化を行い安定化を行う予定である。 またこの8個のコヒーレント加算スーパーモードの閾値を制御することで,高品位なコヒーレントビーム方向制御の実証に成功した。ファイバーカップラーの出力ポート側に8チャンネルの電気光学可変減衰器アレイを配置して,閾値を電気的に制御した。印可損失20%でコントラスト比40-70の回折限界光ビーム掃引を最大3kHzの掃引速度で行うことができた。機械的ビーム掃引と異なり,無質量・無反作用なので,レーザー加工や衛星間通信において有用である。 複合共振器により共振器縦モードが離散化されることを用いて,高波長モード同期コヒーレントアレイに向けた実験を開始した。半導体過飽和吸収体鏡モード同期フェムト秒Er添加ファイバーレーザーを作製し,繰り返し周波数約13MHz,パルス幅600fs,出力3mWを得た。ビームスプリッターを用いて複合共振器構造を導入し,適当な共振器長差を与えて高調波モード抑圧比40dB以上,20次高調波(276MHz)のパルス列を得ることに成功した。ただしパルス波形は大きな裾を有しており,CW成分も存在する。現在高調波モード同期の最適化を行っている。
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