研究概要 |
本申請課題では,高分子ゲルを用いて「ヘテロ高分子の分子内フラストレーションの解消」を「分子刷り込み」の方法を用いて実験的に示すことを目的とする.その実験戦略は以下のとおりである. (1)モノマー対が高分子内で(分子間引力により)弱い内部架橋をつくっている. (2)あるモノマー対が,他の種類のモノマー対が形成されたために対を作れなくなる,フラストレーションが生じていること. (3)そのフラストレーションが「分子刷り込み」の方法で解消されること. (4)形成したモノマー対を高分子を膨潤させることで壊すことができること. (5)その高分子を再び収縮させたときに同じモノマーが対をつくりこと. 平成15年度は,「モノマー対の分子刷り込み」によるフラストレーションの解消について上記(1)-(4)を,平成15年度は,有機低分子化合物の存在下での「モノマー/有機低分子対の分子刷り込み」によるフラストレーションの解消について(1)-(4)を検討し,「分子認識」高分子の設計を行った.具体的には 1)「モノマー対分子刷り込み」のためのモノマー対の分子設計・ゲルの調製 2)「モノマー対分子刷り込み」の有無による高分子ゲルの相挙動,微視的構造の解析 上記で調整した高分子ゲル中のモノマー対を壊し,再生させるた場合の膨潤挙動,および微視的構造を,同一の組成をでモノマー対を形成しない状態で調整された高分子ゲルと比較検討した.微視的構造は,モノマー間相互作用を振動分光法,モノマーの集合構造を光散乱,中性子小角散乱法(京都大学原子炉実験所,スイスPaul Scherrer Institue施設)を用いて観測した. その結果,ヘテロ高分子ゲルによる主に疎水性相互作用による,多点分子認識を見いだした.多点認識は,ゲルを構成する高分子と,認識されるターゲット分子との間の分子認識空間に「フラストレーション」が解消された場が形成されたと考えられ,この結果をもとに,引き続き来年度研究を推進する.
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