研究概要 |
ポリエチレングリコール(PEG)の両末端を長鎖アルキル基で修飾した疎水化PEGは、水溶液中で自己集合化しミセル様構造を形成することが考えられ、それらが形成するナノスケール集合体など近年注目されている。その集合体の構造、形成のメカニズム、さらに構造とレオロジーの関係など明らかにするため、本研究ではPEGの両末端をオクタデシル基で修飾したM10DC18に注目し、その微視的構造及び構造のずりに対する応答を中性子小角散乱とレオロジーの同時測定により検討を行った。 その結果,M10DC18は水溶液中で濃度,温度の変化に対して透明ゲル相,白濁ゾル相,相分離の3つの領域が観測された。透明ゲル状態25%(w/v)のせん断(ずり)強度(γ)に対する散乱パターンの変化を観測した。長鎖アルキル基の疎水性相互作用による自己集合は、高度に結合したドメイン(アルキルコア)形成を促進するだけではなく、体心立方格子(bcc)を有するネットワークを形成し、さらにbcc相のtextureは特定の強度、周波数のせん断を加えることにより制御可能であることが明らかになった。一定せん断周波数(1S^<-1>)において、せん断により誘起されるbcc相を詳細に検討した結果、低せん断強度ではshear alignmentは観測されず粉末パターンを得た。また中程度のせん断強度(γ=50%)では{111}/<112>sliding plane configurationが支配的な6回回転対称回折パターン、さらに高せん断強度(γ【greater than or equal】80%)では{111}/<112>双晶モルフォロジー({khl}:結晶面,<khl>:ずり面に平行な結晶軸)が観測された。回折パターンの変化は、せん断強度に応じて{110}/<111>面が90°回転した結果であり、アルキルコア間の相互作用と密接に関連していると考えられる。
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