研究概要 |
近年界面活性剤集合体,特にラメラ相の構造に対するずり流動場効果が注目を集めている。本研究は,非イオン界面活性剤C_nH_<2n+1>(OC_2H_4)_mOH(C_nE_m)のラメラ相に対してずり流動場中における中性子小角散乱,X線小角散乱,小角光散乱の測定およびレオロジー測定を行い,特定のずり速度(0.3〜1s^-1)において、ラメラ繰返距離が不連続に減少し,膜間の水層がほとんど排除された「濃縮ラメラ」が形成されることを見出すとともに,その機構解明を目指したものである。 1.測定装置の政策 μmスケールおよびnmスケールの構造変化を短時間で追跡するために,流動場小角光散乱(shear SALS)および流動場X線小角散乱(shear SAXS)の測定装置を製作した。 2.時分割SANSおよびSALSの測定 一定ずり速度の下でSANSおよびSALSパターンの時間依存性を測定した。ずり速度0.3-3s^<-1>ではずり流動場をかけてから数時間後に繰返距離の不連続な減少が観測され,ある種の相転移が起こっていることが示唆された。定常状態における繰返し距離はずり速度1s^<-1>付近で極小を示した。一方SALS測定からは,ずり流動場をかけてから数分以内にμmスケールの構造変化が起こることがわかり,これが繰返距離の不連続な減少を引き起こしていることが示唆された。ずり速度3s^<-1>ではさらにオニオン相形成に対応するパターンが観測された。 3.ずり応力測定 一定ずり速度の下でずり応力の時間依存性を測定した。定常状態のずり応力は低ずり速度領域においてずり速度と共に増加したが,繰返距離が極小を示す1s^<-1>付近になるとずり速度増加に対して減少するという異常な挙動を示した。これはSANSにより示唆された局所的な相分離を支持する結果といえる。
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