本研究は、コア-マントル境界領域におけるコア物質とマントル物質の物性や反応を明らかにすることを目的としており、本年度は昨年度積み上げられた実験技術の改良に基づいて、さまざまな条件下での実験を行った。 まずFeO単体、およびFeO-Fe混合系の試料をNaClやAl_2O_3を圧力媒体として15-100GPa領域まで加圧し、融解するまで様々な温度に加熱した。一部の加熱実験は筑波の放射光実験施設PFのBL13ビームライン、およびSPring-8で行ない、高温高圧下のX線その場観察も行なった。また加熱後の試料は回収して1気圧下で研磨処理を行い、さらにFIB (Focued Ion Beam)を用いて任意の極微小部分を切り出し、電子顕微鏡による組織や組成の観察を行った。これらの実験を通して、従来さまざまな矛盾した結果が報告されており実態がまだよく分かっていないFeOの超高圧高温領域における相平衡関係の全貌が明らかにされつつある。またFe-FeO系の実験からは、この系における共融点の圧力に伴う組成や温度変化の様子が明らかにされつつある。これらの情報はいずれもコア-マントル境界におけるFeとケイ酸塩の反応の様子を解明していく上で重要となるものである。 これらの実験を通して、基本的には予定された手法により目的が達成される見通しが立ったが、まだ温度の安定度や試料と圧力媒体の化学反応など細かい実験技術上の問題がいくつか未解決のまま残されており、それらを解決すべく、さまざまな試みが繰り返しながらさらに研究を続けている。
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