研究概要 |
本研究では,衛星搭載マイクロ波散乱計および高度計の10年間にわたる時系列データを解析し,オホーツク海の表層循環の季節変動および経年変動の実態を明らかにすることを目的としている.オホーツク海における従来の海洋観測は,気象条件など観測環境の厳しさや政治的要因などにより,比較的短期間の船舶観測,係留観測,漂流ブイ観測などに限られてきた.本研究では,これらの制約を受けない衛星観測データを用いることにより,今までほとんど理解が進んでいない表層循環の季節変動および経年変動について明らかにすることを試みる. 今年度は,昨年度に引続いて衛星高度計データの解析を進め,衛星高度計によって観測された海面高度偏差のデータからオホーツク海の表層循環像,特に東樺太海流の季節変動および経年変動を捉えることを試みた.得られた東樺太海流の経年変動を,マイクロ波散乱計によって観測された海上風場から推算されたスベルドラップ流量と比較した結果,非常によい対応があることが明らかとなった.また,高度計データを解析することにより,冬季にアニワ岬沖から北海道沿岸域へ流入する表層流量の経年変動やクリル海盆に秋季に発達する高気圧性渦の挙動に関しても新しい知見が得られた.さらに,宗谷海峡に設置した海洋レーダによって観測された表層流速場および海面高度計,沿岸潮位などのデータを組み合わせて解析することにより,宗谷暖流の季節変動,経年変動を明らかにすることができた.
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