研究概要 |
成層圏突然昇温現象(SSW)発生期前後における成層圏-対流圏間の力学的上下結合のメカニズムとその予測可能性を解明することは,対流圏循環の中長期予報の精度向上にとって,極めて重要である. 今年度はまず,SSW発生やSSWと関連して発生する可能性のある帯状風偏差の下方伝播を誘起する前駆現象と,その予測可能性を解明するため,気象庁一ヶ月アンサンブル予報データと客観解析データを用いて,2001年12月末に北半球で生じた波数1型のSSWと,2002年9月末に南半球で初めて生じた極渦分裂型SSWに関して事例解析を行い,以下のような研究成果を得た.(1)2001年12月末のSSWの発生は少なくとも2週間前より予測可能であり,SSWオンセット時には,成層圏循環の予測の初期値依存性が極めて高くなる.(2)このSSWの前駆現象として,対流圏内の帯状風が特徴的な子午面分布を示す.(3)これまでの統計的研究に基づく結論とは異なり,このSSW直後に生じた対流圏内における帯状風偏差の力学的な予測可能性は低い.(4)2002年9月末に南半球で生じた極渦分裂型のSSWの前駆現象として,対流圏における総観規模擾乱の高い活動性が重要である. 一方,より長期間での,成層圏-対流圏間の力学的結合の振る舞いを調べるため,南半球成層圏惑星波の構造と波-波相互作用の年々変動について,対流圏からの波活動度に着目したデータ解析を行った.また,赤道域QBOの位相によるSSW現象の特徴の違いを大気循環モデルによるパラメータ走査数値実験で調べた.さらに,大気海洋結合モデルを用いて大規模山脈の高さを変えた数値実験結果を解析し,環状変動におよぼす地形の影響を調べた.
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