研究概要 |
領域気候モデルを用いて,夜半から朝に降水極大が生じるバングラデシュの降水日変化の発生機構についてシミュレーションを行った。その結果,これまで推測されていたようなバングラデシュ北東に位置するメガラヤ高地から冷たい夜間の山風が南西季節風と収束を起こして降水が生じる機構ではなく,南西季節風がメガラヤ高地に直接吹きつけて強制上昇を起こしたり,前日の降水システムが作った冷気湖に乗り上げて強制上昇することにより降水システムが発生する事がわかった。また,夜間に起こるのは,昼間は陸上の発達した混合層によって進入を妨げられていた水蒸気に富むベンガル湾からの気塊が,夜になると混合層の消失と地面摩擦の減少のため強い風速を保ったまま陸上奥地まで吹き込むためである事も判明した。 また、大気大循環モデルを用いて、陸面の土壌水分および地温条件を固定したアンサンブル(16個の3か月間のシミュレーションRun)実験と、そのような固定を行わなかった同サイズのアンサンブル実験(コントロール)とを比較することによって、陸面過程の大気循環に与える影響度を、アンサンブル内部各Runの類似性の相違から測定した。結果として、主として地表の相対湿度が0.2-0.4である比較的乾燥した地域のみにおいて、陸面の条件が蒸発を規定し、それが大気へと伝わっていることが分かった。それらの陸地の上空では、陸面さえ固定すれば、すなわち陸面の条件をリモートセンシング等で推測し一意に定めることができれば、少しは予測可能性が向上すると想像される。モデル依存性も含め、さらなる検証を行って行く予定である。 さらに、熱帯モンスーン地域は海洋からの水蒸気供給を含め、海洋の影響が大きい事から、領域気候モデルの大気境界層の計算スキームを観測結果と比較する事も始めた。
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